okra

 先週末、所用で実家に帰った。弟が途中まで車で迎えに来てくれた。飲みものがないと言うのでスーパーに寄り、お茶と夕飯のための食材を選んでレジに並ぶ。

 週末の夜のスーパーは混んでいて、レジは大行列だった。順番を待つ間、弟がふらりと野菜売り場へ行き、すぐ戻ってきたと思ったらなんとオクラを1袋カゴに放りこんできた。なんでオクラ? 夕飯は餃子にしようと思ってたし、実家に住んでたときは家族の誰もオクラなんて買ったことなかった。ほんとうになんの脈絡もないことだ。狐につままれたような気分になって、これ自分で食べるのかと聞くと弟はそうだと言った。どのように食べるのかと聞くと洗ってレンジでチンすると言った。私は思わずほう、と言った。ちょっと前まで唐揚げとかフライドポテトとかウィンナーとかばかり喜んで食べていた弟がまさか自らオクラを選んで持ってくるとは夢にも思わなかったからだ。やっとレジの順番が来て会計を終えると弟は例のオクラを大事そうにビニール袋へしまってヘラヘラ笑っていた。最近は肉とかだと胃がもたれるからこういうのが好きなんだよね、と。

 帰りの車の中であんたオクラの存在何歳のとき知った? と聞いてみたくなって、聞かなかった。オクラって大人になってから覚える食べものだって言うイメージがあって、まあ私の勝手なイメージでしかないんだけど、弟はオクラなんてさすがにまだ眼中にないだろうと勝手に思っていた。なんならいい歳こいた姉の私すらまだオクラの魅力を理解できてないのだ。そもそもそんなに食べたことないし、嫌いではないけど、わざわざ自分で買うほど欲することもない。それが、だ。弟はスーパーに並ぶ幾多の商品の中から、よりにもよってオクラを選んだ。弟のほうが私よりよっぽど大人なのかもしれない。姉は少し悔しい。

 実家についてから、オクラを洗って素揚げしてあげたら、いつか唐揚げとかウインナーとかをものすごい勢いで食べてたのと同じように秒ですべて食べつくしていた。そこは変わらないのかよと思った。もう全部たべちゃったのかよ!と言ったら、お姉ちゃんはオクラそんな食べたいと思ったことないんでしょ、嫌いなんじゃないの? と言われた。そんな食べたいと思ったことないが、嫌いになるほど興味もないが、今はちょっと食べたかったなと思った。