もしも明日が晴れならば、

 8月、ここには何も書かず終わってしまった。8月、あっという間に過ぎていった。短い夏。年々短くなっていってる感じがある。私が長ーく生きたから?

 

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 一昨日の晩、台風が来ててものすごい風雨。活きの良い風の塊がそこいらじゅうにぶつかりまくって、だいぶ荒れていた。窓なんかガタガタ言わされちゃって、割れるか外れるかするんじゃないかと心配で(あとうるさくて)まともに眠れやしない。こわいので部屋の明かりを小さくつけたまま布団に入り、カーテンのドレープをぼんやりなぞるように眺めながら、ずっと風の音を聞いていた。時々、葉っぱなのか枝なのか虫なのか、それなりのものが窓にバチッとぶつかる音がする。蝉とか蝶とかクワガタとかが風に煽られて、空中をぐるぐる回ってしまっているのを想像したら不憫だった。向かいの家の庇の上でいつも寝てる野良ネコのことも心配だった。それから、夏も終わるのだろうな、と思った。

 台風、いつも夏の終わりにやってきて、残りの夏を攫っていく。毎年そうやって、まるで舞台の装置転換みたいに、嵐が過ぎるとすっかり秋の情景が出来上がっている気がする。きっとこの嵐が去ったら、虚しいほどに澄んだ秋晴れ。鱗雲。虫がちろちろそこいらじゅうで鳴くのに、耳に染みてくるような静けさ。

 

 明け方と朝の間くらいに嵐は過ぎていったようで、いつのまにか眠っていた。7時ごろ目覚ましに起こされてベランダに出てみたら、もうあっさり晴れていた。でも台風一過によくあるような、さも何事もありませんでした〜みたいなピーカンではなく、ちょっとは申し訳ないと思ってるのかな、くらいの控えめな青空。野良ねこはいつも通り庇の上で寝ていたけれど、なんだか疲れているような印象。全く大変だったんだよと文句のひとつでもいいたげに、尻尾をぶらぶらさせてくうくう寝ていた。どこで嵐をやり過ごしたのだろう。

 

 電車は倒木やら点検やらでまだ動いていないようだったので、仕事には自転車で向かった。少し漕いだだけで暑くて暑くて。汗がどばどば出て、自転車ごと冷たいプールに飛び込みたいと思った。途中でアイスを買った。夏、攫われなかったみたいだ。あんまり嵐に吹き晒されたもんだから、連れていかれるまえにどこかに引っかかって残ったのか。とにかく、よかった。今日からもまた夏をやる。

 

 

p.s.

定期的に相米慎二監督の映画『台風クラブ』を観たくなったり、人に見せたくなる時がくるので、いっそDVDを買うべきか。